【虎に翼】尊属殺人の斧ヶ岳美位子のモデルは栃木実父殺害事件だった

NHKの連続テレビ小説(朝ドラ)で放送中のドラマ「虎に翼」で、刑法200条「尊属殺人罪」がテーマに取り上げられ話題となっています。

ストーリーの中で、事件を起こして弁護を依頼している石橋菜津美さん演じる斧ヶ岳美位子(おのがたけ・みいこ)には、実在するモデルがいて、事件のモデルは、1968年(昭和43年)の「栃木実父殺害事件」です。

ストーリー中の斧ヶ岳美位子のモデルは誰だったのでしょうか?実際の事件についてまとめました。

目次

【虎に翼】尊属殺人の斧ヶ岳美位子のモデルは?

朝ドラ「虎に翼」の物語の中で、斧ヶ岳美位子(おのがたけ・みいこ)というキャラクラーが登場。

その美位子が起こした事件のモデルは、実際にあった「栃木実父殺害事件」です。

「栃木実父殺害事件」は、1968年(昭和43年)10月、栃木県矢板市で発生し、当時の新聞や週刊誌などで実名報道がされています。

ここではあえてフルネームは書きませんが、ドラマの斧ヶ岳美位子のモデルとなったのは、「○代」さん。

ドラマ「虎に翼」のストーリー中の事件の内容は、次のとおりです

  • 石橋菜津美さんが演じる斧ヶ岳美位子は、尊属殺人の罪で起訴され保釈中。
  • 美位子は、父親からの虐待に長年耐え続け、母親が家を出て行ってから、父親と夫婦同然の生活を余儀なくされ、子供を2人も産まされました。
  • そして、仕事先でできた恋人と結婚しようとした美位子に対して父親は怒り狂い、彼女を監禁して暴力を振るい、その結果として美位子は父をこ○してしまいます。
  • 母からの願いもあり、美位子は山田轟法律事務所で弁護を依頼。事務所を手伝いながら居候しています。
  • 東京地裁で行われた一審の判決は、情状酌量し刑の免除が言い渡されました。

この事件の焦点となるのは、刑法200条の尊属殺人罪が違憲かどうか。

よねたちは尊属殺人罪は憲法14条に違反していると主張し、最高裁まで持ち込む覚悟を示しています。

栃木実父殺害事件とは?

ドラマでは少しだけオブラートに包まれて描かれていますが、実際の1968年(昭和43年)10月に発生した「栃木実父殺害事件」とはどんな事件だったのでしょうか?

事件の概要は次の通りです。

  • 栃木県に住んでいた○代さんは、父と母、そして妹2人と弟4人の9人家族。○代さんは14歳の時から実の父親から性的虐待を受けていた。
  • 耐えきれずに○代さんは母親に訴えるが、母親は父親に逆に暴力で脅され、母は○代さんと妹1人を残し、弟妹5人を連れて家を出て北海道へ。
  • 父と○代さんと妹の3人の生活をしていたが、妹は中学を卒業後東京に就職して巣立ち、父と○代さんは夫婦同然のような2人だけの生活になってしまう。
  • 1956年(昭和31年)に母と弟妹たちが帰ってきて、再び家族と暮らし始める。母は父の行動を厳しく監視していたものの、○代さんは妊娠してしまう。
  • ○代さんは父から逃げるように他の男と駆け落ちするが、父に居場所を突き止められ連れ戻される。
  • 逃げられないという諦めから、父が借りた市営住宅で、○代と父の2人だけの生活が再びはじまる
  • 12年間の間に○代は、5人の子供を産み(うち2人は生後まもなく死亡)、3人の子供は育った。
  • さらに5回中絶しており、6回目の時に医師の勧めで不妊手術を受けた。
  • 1968年(昭和43年)、29歳になった○代さんは、勤務していた印刷会社で7歳年下の恋人ができる。
  • 結婚したいということを父親に報告したところ、父は激怒。○代さんは家出を試みるも失敗。
  • 父は○代さんを監禁して虐待を繰り返し、耐えきれなくなった○代さんは父を○害してしまう。

この事件で、○代さんは「刑法200条(尊属殺人罪)」で起訴されました。

被告人(○代さん)の弁護を担当したのは、栃木県宇都宮市で弁護士事務所を構える大貫大八氏と息子の大貫正一氏でした。

大貫正一氏

ドラマと同様に、弁護側は「刑法200条(尊属殺人罪)は、法のもとに平等をうたう憲法第14条に違反している」と主張していました。

刑法200条(尊属殺人罪)
自己(または配偶者)の直系尊属(父母・祖父母など)をあやめた者について、通常よりも重い無期懲役または死刑のみと定められた明治刑法

憲法第14条
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない

この事件の第一審、第二審、最高裁判決は次の通りです。

第一審(宇都宮地裁):1969年(昭和44)5月29日
刑法200条(尊属殺人罪)を違憲とし、刑法199条(殺人罪)を適用した上で、情状を考慮したうえで過剰防衛であったとして刑罰を免除

第二審(東京高等裁判所):1970年(昭和45)5月12日
刑法200条は合憲とし、その上で最大限の減刑を行い、かつ未決勾留期間の全てを算入して、懲役3年6月の実刑

終審(最高裁判所大法廷):1973年(昭和48)4月4日
従来の判例を変更し刑法200条を違憲と判断した上で、刑法199条を適用し懲役2年6月、執行猶予3年

ちなみに最高裁判所大法廷では15人の裁判官がおり、うち8人が刑法200条の法定刑が死刑・無期懲役に限定されるのは違憲、6人が尊属殺人の規定を置くこと自体が違憲、1人が合憲と主張しました。

刑法200条は、大日本帝国憲法から日本国憲法から変わったあとも効力を保っていましたが、この事件がきっかけで違憲であるという判決が下り、この後は適用されていません

そして、1995年(平成7年)の改正刑法で正式に削除されました。

まとめ【虎に翼】尊属殺人の斧ヶ岳美位子のモデルは栃木実父殺害事件だった

朝ドラ「虎に翼」の斧ヶ岳美位子のモデルとなった人物と事件についてまとめました。

ドラマの終盤に重いテーマを取り上げていますが、このような事件や法律が実際にあったことを知らない方も多いと思います。

多くの人が知るきっかけになったのではないのでしょうか?

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